オーバーエンガディン地方の基礎データ | |
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所属州 Kanton/Canton/Cantone |
グラウビュンデン州 Kanton Granbünden Chantun GrischunKanton |
言語 Sprache/Langue/Lingua |
ドイツ語(スイス・ドイツ語) ロマンシュ語 |
郵便番号 Postleitzahl/Code postal/Codice Postale |
シルヴァプラーナ:7513 シルス:7514 マロヤ:7516 ソーリオ:7610 |
標高 Höhe/Altitude/Altitudine |
シルヴァプラーナ:1,815m シルス:1,809m マロヤ:1,809m ソーリオ:1,090m |
人口 Einwohner/Population/Abitanti |
シルヴァプラーナ:1,086人 シルス:761人 マロヤ:310人 ソーリオ:167人 |
行政ウェブサイト | シルヴァプラーナ:www.guarda.ch/ シルス:www.sils-segl.ch/ ソーリオ:www.soglio.ch |
オーバーエンガディン地方(Oberengadin/Engiadin'Ota)はウンターエンガディン地方に対して南側、イン川の上流部のエリアのこと。
特にサンモリッツから南西方向に伸びる細い谷をたどり、湖の美しいシルヴァプラーナ(Silvaplana)からマロヤ峠(Malojapass)、イタリア国境を越えるルートが景勝エリアとして知られていますが、鉄道路線がなく交通手段は専らポストバスのみになります。
このページでは主にポストバスの路線に沿って、訪れるべき美しい村々をご紹介していきます。
シルヴァプラーナ
Silvaplana
サンモリッツ駅前を出発するバスで20分ほど行くと、車窓の左側にサンモリッツ湖よりも大きく、また周囲が開けた美しいシルヴァプラーナ湖(Lej da Silvaplana)が目に飛び込んできます。
そのほとりにある小さな村がシルヴァプラーナ。
ここから西へ分岐しているルートがユリア峠(Julierpass)越えのルートで、ティーフェンカステル(Tiefencastel)でアルブラ峠越えのルートと接続しています。
湖の対岸にあるスールレイ(Surlej)の村からはロープウェーでそのはるか真上にあるコルヴァッチュ展望台(Piz Corvatsch 3,303m)へ登ることができ、西にユリア峠、東にはベルニナ・アルプスで唯一標高4,000m台のピッツ・ベルニナ(Piz Bernina 4,049m)などを望むことができます。冬はサンモリッツのコルヴィリア、ピッツ・ナイル周辺と併せてヨーロッパでも有数のスキーリゾートエリアとして知られていて、サンモリッツにあるスキー場のひとつとして認知されています。
また、サンモリッツ湖と同じようにシルヴァプラーナ湖も冬場はカチカチに凍った上に積雪があるため、広大なクロスカントリースキーのトラック、犬ゾリコース、ハンググライダーやパラグライダーの着地スポットなどさまざまな使われ方をしています。大会などが行われていなければ普通に上を自由に歩くことができるので是非。
シルヴァプラーナへの行き方
アクセスはバス(エンガディンバスとポストバス)利用が基本で、バス1・2・4・5・6番系統とポストバスのキアヴェンナ(Chiavenna)方面行き、ユリア峠・クール方面行きいずれも経由します。
中心の停留所はシルヴァプラーナ・ポスタ(Silvaplana Posta)で、コルヴァッチュ行きロープウェー駅のあるスールレイまではここから所要5分。
シルス
Sils im Engadin/Segl
シルヴァプラーナを過ぎると道沿いに水路が続き、そのまま次に現れる湖に繋がっています。この湖がシルス湖(Lej da Segl)で、その手前にある村がシルス。
村のなかにこれといった名所があるわけではありませんが、澄んだ空気と美しい湖、そして雄大な谷がドイツの作家ヘルマン・ヘッセを始めとする多くの芸術家や作家を惹きつけたという場所です。特に哲学者フリードリッヒ・ニーチェはこの地を愛し、1881年から7年間毎年避暑に訪れていたといいます。現在でもニーチェの家(Nietzschehaus)は記念館として残されていて、一般に公開されています。
村は2つのエリアに分かれていて、幹線道路付近の「シルス・バセーリア Sils-Baselgia」と東側の山に近い「シルス・マリア Sils Maria」があり、村の中心はマリア地区のほうになります(ちなみにバセーリアとはロマンシュ語で教会の意)。
エンガディンバス6番系統が経由するロープウェー乗り場からはコルヴァッチュの稜線にあるフルチェラス(Furtschellas 2,800m)の中腹にあたるラ・チュデラ(La Chüdera 2,312m)までロープウェーで登ることが出来ます。ラ・チュデラからフルチェラスまでも路線がありますが、スキー場のクワッドリフトなので注意。
シルスへの行き方
アクセスはバス(エンガディンバスとポストバス)利用が基本で、シルス・マリアの中心にあるポスタ停留所(Sils-Post)へはエンガディンバス2・4・6番系統とポストバスのキアヴェンナ(Chiavenna)方面行きが経由します。6番はフルチェラス方面ロープウェー乗り場を唯一経由しますが、シルス・マリア・ポスタ止まりで、4・6番はバセーリア地区のドットゥラス(Dotturas)、サン・ルレンチ(San Lurench)にも停車します。
マロヤ
Maloja
シルスからさらに南へ、シルス湖と西側の山の間のわずかなスペースを抜けてやがて湖が途切れるとマロヤに到着します。
ローマ時代から重要な街道だったマロヤ峠(Malojapass)、そしてその先にあるブレガリア谷(Val Bregaglia)の起点がこの場所で、古くから交通の要衝としてこのマロヤとマロヤ峠は栄えてきましたが、今となっては静かで小さな山あいの村です。
アルプスの自然を描いた作品を多く残したイタリア人画家、ジョヴァンニ・セガンティーニ(Giovanni Segantini 1858-1899)が晩年を過ごした村で、死の2日後にこの村の共同墓地に埋葬されました。現在でも彼のアトリエ(Atelier Segantini)が残されていて、時期限定ながらも見学することが可能です。また、アトリエ横の道をさらに奥へ進むとセガンティーニが住居にすることを熱望していたというベルヴェデーレ塔(Torre Belvedere)があり、こちらも時期限定ながら塔に登ることが可能。
城跡の近くにはルツェルンの氷河公園で見られるものと同じ原理で出現した、氷河の侵食によってできた穴を見ることができます。セガンティーニゆかりの場所は「センティエーロ・セガンティーニ Sentiero Segantini」として周遊ルートが整備されていて、インフォメーションセンターでパンフを入手することができます。
マロヤへの行き方
アクセスはバス(エンガディンバスとポストバス)利用が基本で、マロヤの中心にあるポスタ停留所(Maloja-Post)へはエンガディンバス2・4系統とポストバスのキアヴェンナ(Chiavenna)方面行きが経由します(エンガディンバス2番はマロヤ・ポスタが終点)。サンモリッツ駅やドルフ(シュールハウス広場)からは所要約40分。シルスやシルヴァプラーナから湖沿いのハイキングもオススメです。
マロヤ峠
Malojapass
マロヤの村を過ぎるとすぐ峠があり、ここを越えるともうすぐイタリアへと至ります。
この峠一帯はは北のドナウ川水系と南のポー川水系の分水嶺で、峠の展望台から見えるピッツ・ルンギン(Piz Lunghin)はさらにライン川水系の分水嶺があり、ここを境に3方向へ川の流れが変わります。ちなみにエンガディン地方を南北に流れるイン川はドナウ川水系で、ピッツ・ルンギン近くにあるルンギン湖(Lägh dal Lunghin)からオーストリア、ドイツを経てパッサウ(Passau)でドナウ川と合流、最終的にはルーマニアのスリナ(Sulina)で形成されるドナウデルタから黒海へ注いでいます。
時間は掛かりますが、マロヤ峠からルンギン峠を経てローマ時代の街道遺跡が多数残るセプティマー峠(Septimerpass)を巡るハイキングコースが整備されています。また、この遺跡に関してはマロヤ峠から20分〜30分ほど歩いた場所でも見ることができます。
ここから南、ブレガリア谷方面へはポストバスの本数もぐっと減り、そしてエンガディン(分水嶺を過ぎているので、本当の意味でのエンガディンではありませんが)の果てへ、標高差1,500mをゆっくり下っていきます。
ソーリオ
Soglio
マロヤ峠を越えるとドイツ語・ロマンシュ語圏よりもイタリア語・文化圏が近づいてきているような雰囲気が濃くなってきます。
カサッチャ(Casaccia)、ヴィコソプラーノ(Vicosoprano)、ボルゴノーヴォ(Borgonovo)といったブレガリア谷の村々を過ぎ、イタリア国境まで残り約2キロほどの村プロモントーニョ(Promontogno)でバスを乗り換えて、山道を10分ほど北東へ進むとソーリオの村。丘の上にちょこんと乗っかったような場所にあり、古くからの姿をそのまま残しています。
「孤高の人」などで知られる小説家、新田次郎が1961年(昭和36年)に訪れた際の感動がエッセイ「アルプスの谷 アルプスの村」に記し、セガンティーニも冬はこの村で過ごしたといい、芸術家・作家が愛した村として知られています。
ヴィコソプラーノ、スタンパ〜ソーリオのハイキングもオススメ。また、この村を散歩していて目に付くのが栗。もともとは重要な食料として収穫されていたものを、今ではケーキやパン、ジャム、ソースなどで多く使われていてちょっとしたお土産にいい感じです。もちろん栗を使った料理は村のレストランで味わうことが可能。
ソーリオへの行き方
アクセスはポストバスのみで、サンモリッツ〜キアヴェンナ間のバスでまずふもとの村プロモントーニョ・ポスタ停留所へ。そこからソーリオ・ヴィラッジョ(Soglio Vilaggio)行きバスに乗り換えて約10分。1日約14往復で、場合によっては突然運休になったりすることがあるので注意。