スイス・列車の種別について
スイス国内にはスイス国鉄・私鉄の国内列車から国際長距離列車まで、様々な種別の列車が運行しています。
氷河急行などの特殊な列車を除けば予約も追加料金も要らない列車が殆どなので、この機会にいろいろな列車を利用してみましょう。
IC InterCity(インターシティ)
インターシティはヨーロッパではおなじみの種別で、その名の通りの「都市間特急」としてスイスでは1982年に運行を開始しました。
客車はさまざまなタイプがその運用に就いていて、Re460型機関車+客車編成のほか、IC2000型客車を利用した総2階建て編成などがあります。IC2000型はBahn2000計画準拠で最高速度200キロの運行が可能ですが、従来の車両限界よりも拡張された車両のため、拡張・改修工事の完了した路線でのみ運行されています。
2017年12月のダイヤ改正からIC運行路線に系統番号が割り振られるようになり、より分かりやすくなりました。
ICN InterCity-Neigezug(イーツェーエヌ・イーシーエヌ)
ICNは2000年に登場したRABDe500形電車で運行されるインターシティ(都市間特急)で、スイス国内の列車としては最速の200km/hでの営業運転が行われています。
ドイツのICEやフランスのTGVのようないわゆる「新幹線タイプ」ではありませんが、スイス国鉄が掲げるBahn2000計画における都市間路線の高速化に則った最新型の列車です。通常は7両編成もしくは7+7の14両編成での運行となります。
現在はジュネーブ空港駅〜ビール/ビエンヌ〜チューリッヒ中央駅〜ザンクトガレン間、ジュネーブ空港駅〜バーゼルSBB駅、バーゼルSBB駅〜ルツェルン〜ルガノ〜キアッソ、チューリッヒ中央駅〜ルガノ〜キアッソなどの区間で運行されていて、徐々に運行区間が増えてきています。
1等・2等の構成で、1等には携帯電話での通話が禁止のクワイエットゾーンが設けられています。全列車で予約・座席指定は不要で自由に乗車可能ですが、予約は可能(60日前〜前日)。
2017年からは種別としての区分けではなくなり全列車がICに統合されましたが、専用車両の運用は継続されています。
IR InterRegio(インターレギオ)・RE RegioExpress(レギオエクスプレス)
IR・REはICと同じ区間をICの止まらない駅に停車しながら運行されたり、地方の中小都市間を結んだりといった運行形態をとっています。ICを特急とすれば、IRやREは急行・準急といった扱い。
一般的にIRは中距離、REは短距離での運行となっていて、例えばジュネーブ空港〜ローザンヌ〜ブリーク間ならIR、ジュネーブ空港〜ニヨン〜ローザンヌ間ならREといった具合です。運用される車両などの基準は同じで機関車+一般的な客車の編成ですが、ダイヤの都合でICN用のRABDe500型などが運用されることもあります。
D Schnellzug/Train Direct(シュネルツーク/トラン・ディレクト)
いわゆる急行列車で、スイス国鉄では既に消滅、スイス国内の私鉄でのみ運行される列車で使用されている種別ですが、現在では氷河急行やベルニナ急行、ゴールデンパス・パノラマ急行などの特殊な列車に残るのみの種別となっています。かつてはスイス国鉄でも存在していましたが、呼称が言語によって異なることから廃止されてIR・REに統合されました。
R Regio(レギオ)
スイス全土で運行されている普通列車で、RBDe560形電車などの日本の電車に近いものが運用されていることが殆ど。一部都市圏ではRABe523形電車などの低床式電車の運用も始まっています(ジュネーブ・ルツェルン・バーゼルなど)。
他の種別との違いとしては、基本的に車内検札は行われない、いわゆる信用乗車方式が採用されています。但し抜き打ちでの検札が頻繁に行われていて、有効な切符を持っていない場合は罰金が課せられますので注意しましょう。
S-Bahn(Sバーン)・RER (Réseau Express Régional:アールイーアール)
Sバーンは主にドイツ語圏の都市部で運行されている都市近郊列車で、基本的にはレギオと同じく各駅停車です。路線ごとに番号が振られていて、S1・S11というように表されます。チューリッヒ、ベルン、ルツェルン、バーゼル近郊などで運行されています。
また、ジュネーブ、ローザンヌなどのフランス語圏ではRERと表記され運行していますが、運行体系等はSバーンと同じです。(ジュネーブは1路線、コルナヴァン駅〜フランス領ベルギャルド間のみRERでその他のローカル路線は全てレギオかREでの運行)
EC EuroCity(ユーロシティ)
ユーロシティは国際列車のうち一定基準を満たした特急列車の種別で、基本的にはインターシティのように機関車+客車の構成で運行されることが多いため、必ずしも高速というわけではありません。しかし、各国の違うデザインの客車が一編成に混在していたり、たまにびっくりするような長い区間を走る列車があったりするのでそれも楽しみのひとつです。
他のヨーロッパ諸国では乗車に予約が必要なことが多い列車ですが、スイス国内のみを乗車する場合には予約も追加料金も必要ないため、他の列車と同じように気兼ねなく乗ることができます(スイスからそのまま出国する場合、乗り入れ先で予約が必要な場合はスイス国内から通しで予約したほうが無難です)。
チューリッヒ中央駅〜ミュンヘン中央駅、ミラノ中央駅(旧チザルピーノ・ETR470型での運行)、ジュネーブ空港駅〜ミラノ中央駅及びヴェネツィア・サンタルチア駅(旧チザルピーノ・ETR610型での運行)などが本数も多く乗る機会も多い列車ですが、クール駅発(ドルトムント中央駅、キール中央駅)も多いのがちょっと意外です。
ICE InterCityExpress(インターシティ・エクスプレス)
ICEはドイツ鉄道(DB Deutsche Bahn)の高速列車で、いわゆる新幹線タイプの列車のひとつです。
ドイツ国内の高速線では200km/hでの営業運転が行われていますが、スイス国内では通常IC等と同じ速度での運行されています。主にチューリッヒ中央駅、バーゼルSBB駅、ベルン駅、インターラーケン・オスト駅からドイツ中部・北部方面(フランクフルト中央駅、ハンブルク・アルトナ駅、ベルリン中央駅など)への運行となっています。
TGV Lyria(テジェヴェ・リリア)
TGVは言わずと知れたフランス国鉄(SNCF)の高速列車で、スイス路線線に関しては「TGV Lyria(リリア)」のブランド名で運行されています。
チューリッヒ中央駅、バーゼルSBB駅、ベルン、インターラーケン・オスト駅、ローザンヌ、ジュネーブ・コルナヴァン駅とパリ・リヨン駅を結ぶパリ路線(南東線経由 LGV Sud-Est)、ジュネーブ・コルナヴァン駅とマルセイユ・サンシャルル駅、モンペリエ駅、ニース・ヴィル駅などの南仏路線(地中海線経由 LGV Méditerranée)の2パターンが運行されています。(チューリッヒ・バーゼル路線はかつて東ヨーロッパ線経由 LGV Est européenneでしたが、現在すべてのスイス〜パリ路線は南東線経由でパリ・リヨン駅発着に集約されています)
また、スキーシーズンにはモントルー、シオン、ブリーク方面へ延長運転されています。
スイス国内のみの乗車の場合は予約・追加料金は必要ありませんが、国境駅もしくはスイス国内最後の駅以遠は予約が必要です。(ジュネーブ発着列車は全て予約が必要となります。)
RJ ÖBB railjet(ÖBBレールジェット)
レールジェットはオーストリア国鉄(ÖBB)が2008年から運行を開始した国際特急列車の種別で、当初はミュンヘン中央駅〜ウィーン経由ブダペスト行きで登場し、2009年からチューリッヒ中央駅からザルツブルク、インスブルックを経由してウィーン西駅を結ぶ路線での運行を開始しました(一部列車はザルツブルク止まり)。
最近流行りの新幹線タイプではなく機関車+客車のスタイルの列車ですが、機関車と客車はいずれもシーメンス社製の新型専用車両を使用し、3クラス仕様(ファースト・ビジネス・エコノミー)、食堂車(座席へのケータリングもOK)、Wi-Fiの利用も可能。
スイス国内だけの利用も可能で、チューリッヒ中央駅からザルガンス(Sargans)、ブックス(Buchs SG)の2駅に停車するので、クール・マイエンフェルト方面やリヒテンシュタインにチューリッヒから日帰りする際には利用価値あり。
EN EuroNight(ユーロナイト)
ユーロシティの夜行列車といえる種別で、国際都市間を運行する夜行列車の種別です。スイス国内のみで完結する夜行列車は残念ながらありませんが、その分スイス国内発着の国際夜行列車は多くあり、そのうちの多くがこのユーロナイトに格付けされています。
ユーロナイトでは豪華な設備を誇るいわゆる「ホテルトレイン」のような列車から、情緒ある古い客車タイプのもの(古いといっても十分快適なクオリティは保たれています)まで幅広いバラエティがあります。スイスから国外へ移動する際にはぜひ一度利用してみたい列車のひとつです。
ただ、ヨーロッパの列車の高速化や夜行列車再編で現在スイス国内から運行されているENはチューリッヒ中央駅発のザグレブ・ベオグラード行き、グラーツ駅行き、ブダペスト東駅行き、バルセロナ・フランサ駅などの少数になってしまいました。イタリア路線が廃止されたことも大きく影響しています。
スイス国内のみの乗車はできず、寝台・クシェット(簡易寝台)・座席のいずれを利用する場合でも基本的に予約が必要です。